
相続放棄に関するQ&A

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相続財産管理人は自動的に「清算人」になる?2023年施行の民法改正による変更点と注意点
2023年(令和5年)4月1日施行の改正民法により、相続人不存在の場合に家庭裁判所に選任される「相続財産の管理人」は「相続財産の清算人」へと変わりました。
「既に選任されている管理人はどうなるのか?」、「手続きはどう変わったのか?」といった疑問について、法律の附則(経過措置)とあわせて解説します。

1 相続財産管理人は自動的に相続財産清算人になる?
改正法の附則では経過措置が定められており、施行日前に旧民法の規定で選任された相続財産管理人は、施行日以後「新民法の規定により選任された相続財産清算人」とみなすとされています(令和3年法律第24号附則第4条第2項)。
そのため、改正法の施行日前に家庭裁判所から選任された「相続財産の管理人」(相続財産管理人)は、「相続財産の清算人」(相続財産清算人)へと自動的に移行します。
【注意:適用される法律は選任時が基準】
名称は自動的に読み替えられますが、施行日前に選任されていた場合、具体的な手続きの流れは「従前の例による(旧法のルールのまま)」とされています(附則4条4項、5項)。
名称は「清算人」でも、改正後の「期間短縮」などの恩恵は受けられない点に注意が必要です。
2 法改正で具体的に何が変わった?(手続期間の短縮)
改正前後の大きな違いは、清算手続きにかかる「期間」です。
| 項目 | 改正前(旧法) | 改正後(新法) |
|---|---|---|
| 主な流れ | 3段階の公告を順番に行う | 公告をまとめ、並行して行う |
| 最短期間 | 約10か月以上 | 約6か月 |
改正のポイント: 従来は「①選任の公告」、「②請求申出の公告」、「③相続人捜索の公告」を順番に行う必要があり、非常に時間がかかっていました。
改正法では、①と③をセットで行い、さらに②を並行して進めることが可能になったため、手続きが大幅にスピードアップされました。
3 改正後民法における「相続財産管理人」とは?(新設規定)
「名称が清算人に変わった」と説明しましたが、実は改正後の民法にも「相続財産管理人」という言葉は残っています。
しかし、改正前とは役割が全く異なります。
・相続財産清算人(新法952条): 相続人不在の場合に、遺産を「清算(分配・国庫帰属)」するための役割。
・相続財産管理人(新法897条の2): 相続人の有無にかかわらず、遺産分割前などで財産が放置されるのを防ぐために「保存」を行う役割。
改正後民法897条の2に基づく「相続財産管理人」には清算権限はなく、あくまで財産の適切な維持・管理を目的としています。
この新制度により、共有状態の遺産管理などがより柔軟に行えるようになりました。
※本記事では「令和3年民法改正により相続財産管理人は自動的に相続財産清算人となるか?」について解説いたしました。
しかし、実際の事案では個別具体的な事情により法的判断や取るべき対応が異なることがあります。
そこで、相続問題についてお悩みの方は、本記事の内容だけで判断せず弁護士の法律相談をご利用いただくことをお勧めします。
関連リンク:法務省Webサイト
令和3年法律第24号 附則
第4条(相続財産の清算に関する経過措置)
1 施行日前に旧民法第九百三十六条第一項の規定により選任された相続財産の管理人は、施行日以後は、新民法第九百三十六条第一項の規定により選任された相続財産の清算人とみなす。
2 施行日前に旧民法第九百五十二条第一項の規定により選任された相続財産の管理人は、新民法第九百四十条第一項及び第九百五十三条から第九百五十六条までの規定の適用については、新民法第九百五十二条第一項の規定により選任された相続財産の清算人とみなす。
3 施行日前に旧民法第九百五十二条第一項の規定によりされた相続財産の管理人の選任の請求(施行日前に当該請求に係る審判が確定したものを除く。)は、施行日以後は、新民法第九百五十二条第一項の規定によりされた相続財産の清算人の選任の請求とみなす。
4 施行日前に旧民法第九百五十二条第一項の規定により相続財産の管理人が選任された場合における当該相続財産の管理人の選任の公告、相続債権者及び受遺者に対する請求の申出をすべき旨の公告及び催告、相続債権者及び受遺者に対する弁済並びにその弁済のための相続財産の換価、相続債権者及び受遺者の換価手続への参加、不当な弁済をした相続財産の管理人の責任、相続人の捜索の公告、公告期間内に申出をしなかった相続債権者及び受遺者の権利並びに相続人としての権利を主張する者がない場合における相続人、相続債権者及び受遺者の権利については、なお従前の例による。
5 施行日前に旧民法第九百五十二条第一項の規定により相続財産の管理人が選任された場合における特別縁故者に対する相続財産の分与については、新民法第九百五十八条の二第二項の規定にかかわらず、なお従前の例による。
改正後民法第952条(相続財産の清算人の選任)
1 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。
2 前項の規定により相続財産の清算人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なく、その旨及び相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、六箇月を下ることができない。
改正後民法第957条(相続債権者及び受遺者に対する弁済)
1 第九百五十二条第二項の公告があったときは、相続財産の清算人は、全ての相続債権者及び受遺者に対し、二箇月以上の期間を定めて、その期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、同項の規定により相続人が権利を主張すべき期間として家庭裁判所が公告した期間内に満了するものでなければならない。
改正前民法第952条(相続財産の管理人の選任)
1 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならない。
2 前項の規定により相続財産の管理人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なくこれを公告しなければならない。
改正前民法第957条(相続債権者及び受遺者に対する弁済)
1 第九百五十二条第二項の公告があった後二箇月以内に相続人のあることが明らかにならなかったときは、相続財産の管理人は、遅滞なく、すべての相続債権者及び受遺者に対し、一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、二箇月を下ることができない。
2 第九百二十七条第二項から第四項まで及び第九百二十八条から第九百三十五条まで(第九百三十二条ただし書を除く。)の規定は、前項の場合について準用する。
改正前民法第958条(相続人の捜索の公告)
前条第一項の期間の満了後、なお相続人のあることが明らかでないときは、家庭裁判所は、相続財産の管理人又は検察官の請求によって、相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、六箇月を下ることができない。
改正後民法第897条の2(相続財産の保存)
1 家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の管理人の選任その他の相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。ただし、相続人が一人である場合においてその相続人が相続の単純承認をしたとき、相続人が数人ある場合において遺産の全部の分割がされたとき、又は第九百五十二条第一項の規定により相続財産の清算人が選任されているときは、この限りでない。
2 第二十七条から第二十九条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する。

